ギア・インプレッション

AGERA RS

SWING

AGERA RS

クラスを超えた安全性と高性能!

一切の妥協なく仕上げた高性能プロファイルと
RAST(ラスト)の組み合わせ。
この相乗効果によりアゲーラRSはスポーツクラスを再定義し、
パフォーマンスクラスというカテゴリーが霞んでしまうほどの
クラスを超えた高性能を実現した。

広がるラスト搭載モデルでブレークスルー

 スイングは1968年からパラグライダー開発を行っている歴史あるメーカーで、ドイツ・ミュンヘンの西約30km付近のランズベリードを本拠地としている。ヨーロッパアルプスにも近く、開発には恵まれた環境であり、ドイツ人の気質を感じる理論立てた開発、品質を追求する姿勢と相まって、安全性に優れた高性能機を送り出し続けてきた。  アゲーラRSは、そんなスイングによる最新の安全技術ラストを搭載した初めてのLTF/EN-Cクラスとなる。そのスピードとサーマルでの上昇性能は2ライナーモデルに匹敵する高性能を備えているという。ラストと2ライナーフィーリングの融合が、どのように仕上げられているか楽しみだ。

スペック

 AGERA(アゲーラ)はスウェーデン語で「アクションをおこす」、また古代ギリシャ語で「永遠」という意味があり、ポジティブなイメージのネーミングとなっている。
 アスペクト比は展開6.3(投影4.8)と、前モデル・ネクサスの展開6.1(投影4.7)に比べ少し高められており正常進化といえる。キャノピー素材はテックファイバー(東レ)ポリウレタンコーティングを施した32g/?の生地をトップセールに、28g/?をボトムセールに採用。リーディングエッジ形成には細くしなやかな形状記憶合金・ニチノール製ロッドを使用した。安定した品質の日本ブランド・テックファイバーと高い縫製技術により仕上げられた翼面は、正確で緻密に仕上げられていることがひとめでわかる。
 テックファイバーは引っ張り強度に優れ、摩擦と薬品に対して強いという特徴を備えた、発色性に優れたナイロン繊維で、現在スイングだけが独占して使用している。そのため、カラーの感じも他にはないスイング独自のものとなっている。ニチノールロッドは、トップセールCライン取り付け部分上面にも使用されている。そのため翼上面は、本当にしわがなく滑らかな仕上がりをみせている。ニチノールロッドはしなやかで強く形が変わらないため、特別に気を使うこともなく、ぐるぐる巻いて翼を畳んでしまっても問題がないマテリアルだ。
 ラインは完全な3ライナー構成で、翼への取り付けられるライン本数は2ライナーモデルよりも少ない。すべてのラインは被覆のないナチュラルなカラーのアラミドラインが採用され、トップには0.8mm/0.5mm、ミドルに1.0mm、ボトムに1.1mm/1.3mmの太さのラインを組み合わせている。12mm幅のライザーは変形5本(Ax2・Bx1・C2x2)で構成、アクセルには軽くスムーズに踏み込めるよう大径のロンスタン製プーリー、アクセル使用時には欠かせないCハンドルが搭載されている。このCハンドルは2つに分けられたCライザー(3本のCラインが内側2本・外側1本に振り分けられている)の上部をブリッジのように繋いでいる。内側Cライザーでピッチコントロール・外側Cライザーで緩やかで高度ロスの少ないターンを行う。ブレークグリップは、握る部分に13cmの柔らかいチューブと固い棒がはいっており、これは取り外すことができ、硬さを好みによって変えることができる。

ラストの安心感が溢れるフライトフィーリング

 RSはラスト(RAST)搭載を意味している。Ram Air Section Technology(ラム・エア・セクション・テクノロジー)といって、翼内部を前後に仕切る壁を設け、翼前方をバッファーセクション(緩衝部分)・翼後方をコアセクション(核心部分)と区分した構造のことで、スイングオリジナルの最新の安全技術だ。翼内部に搭載されたラストによる重量増は30gということだが、機体重量は4.8kg(Sサイズ)に抑えられている。
 フライト中の乱気流の影響をバッファーセクションが吸収し、コアセクションは形状を保ち続ける。そのため、トレーリングエッジまで大きく折りたたまれてしまう様な片翼の大きな潰れが起こらず、深刻なトラブルを軽減するシステムだ。その仕切る壁には逆止弁が設けられ、コアセクションのラム圧は常にパンパンに高く保たれている。変形に耐える強さを保ちながら、その高いラム圧はしわが無いスムーズな翼面を形成する。
 ラストは飛行中の安全性を高めるだけでなく、このように性能の向上にも役立っている。さらに、素早く立ち上がりながらもシューティングを抑え安全なテイクオフを行え、ラフな気流の中でも翼後部全体が動作するためブレークコードの効きを高める効果がある。
 テストフライトでのアゲーラRSは素早く立ち上がり、トリム速度が実にスピーディー。実際Sサイズ(78-90kg)に80kg程度の下限よりのウエイトながら対気速度で40km/hを示した。アクセルは約20cmの操作幅で、15km/h以上のスピードアップが行える効果の高いもので、最高速での安定性も良好、変形5本ライザーにより翼中央付近を大きくピッチダウンさせるようになり、翼端の安定性が保たれている。
 ブレークコードの操作感は実にニュートラル。引き込み始めは軽く、30〜40cm程引き込んでくると少しずつ重さが増し、ちょうどセンタリングポジションで翼の挙動を感じるようチューニングされている。ピッチング、ローリングの導入はスムーズで回復性もよい。
 Cハンドルは2つに分けられたCライザーのおかげで翼中央付近だけを引き込んでピッチコントロールをおこなうため、翼端が不用に動くことなくヨーイングがおこらないため、とくに調子が良い。
 緊急降下手段としては、スパイラル、ビッグイヤー、Bストールを使うことができる。安定した大気のなかでのテストだが、スパイラル-20m/s、ビッグイヤー-4m/s、Bストール-10m/sの降下速度を確認することができた。ニチノールロッドが多用されているため、ビッグイヤーとBストールが機能するか心配していたが、その問題はまったくなかった。
 高性能の機体になるほどウエイトレンジが気になるところだが、アゲーラRSは5サイズ用意され、テイクオフウエイトレンジを10kgそこそこの幅しか設けていない。その範囲であれば、軽め・重めでも同等の性能を発揮してくれる。ウエイトレンジの上限や下限を超えていない限り、それを意識すること自体が古い考えなのかもしれない。

ハイエンドパフォーマンスクラス

 アゲーラRSは"ハイエンドパフォーマンスクラス"だ。経験あるXCパイロットにはもちろん、意欲的で向上心のある(もしかしたら将来的に2ライナー乗っちゃうかも的な)パイロットにおすすめしたい。フルアクセルでのスピード感、サーマルでの上昇率の良さなど、その高性能はまさに2ライナーフィーリングを備えている。Cクラスという確保された安全性のなかで、競技・XCフライトの場面で思い切りチャレンジを楽しめる仕上がりだ。
 余談だが、スウェーデン・ケーニグセグ社に同名の"アゲーラRS"というスーパースポーツカーがある。5リットルV8エンジンは1160bhpを発揮し、サーキットで抜群の性能を持ちながら、日常の公道でのドライブも難なくこなす柔軟性を備えているという。試乗後、スイング"アゲーラRS"とオーバーラップしているイメージを覚えた。

(REPORT:Satoshi MEGURO)

SPEC INFORMATION

サイズ XS S SM M L
セル数 6161616161
翼面積(投影)㎡ 17.719.121.223.225.2
翼面積(展開)㎡ 20.422.024.326.729.0
スパン(投影)m 9.09.610.1 10.6 11.0
スパン(展開)m 11.3 11.8 12.4 13.0 13.6
アスペクト比(投影) 4.84.84.84.84.8
アスペクト比(展開) 6.36.36.36.36.3
飛行重量 kg 65-82 78-90 88-100 98-112 110-125
機体重量 kg 4.6 4.8 5.0 5.3 5.7
安全規格 CCCCC
価格(税別) ¥590,000 ¥590,000 ¥590,000 ¥590,000 ¥590,000

[製造元]SWING/ドイツ
[輸入・販売元]ヘリグライド(株)
[URL]https://www.heliglide.com/

2019年4月号掲載)