
PHI
MAESTRO
長く待ち望んだ
ハーネス・パペッシュの
ハイエンドBが帰ってきた!
次々とニューモデルを送り出すファイの
7つめのモデル・マエストロは
乗り手を選ばない寛容性とパフォーマンスを高次元で融合。
これがパペッシュのハイエンドBグライダーだ!
21と23の中間サイズ
22を新設定
PHI(ファイ)のハイエンドBクラスとしてリリースされたMAESTRO(マエストロ)。ファイの機体名には音楽用語が用いられているが、マエストロの意味を調べてみると「男性の最高音域芸術家や専門家に対する称号」「西洋クラシック音楽やオペラの指揮者」のことを指すようだ。個人的には20年以上前になるがフジテレビ系列で放送された三上博史主演のドラマ「それが答えだ!」を思い出す(笑)。
話を戻そう。ファイを立ち上げたハーネス・パペッシュが最初にリリースしたSYMPHONIA(シンフォニア)は、スーパーAクラスという新しいジャンルを私たちに提示した。そして自身の得意分野であるハイエンドBクラスモデルを満を持して世に送り出した。
用意されたサイズは全部で6サイズで、50kgから130kgまでの重量をカバーしている。また最近目にするようになった「extended weight range(拡張重量)」では、XSを除く各サイズで上限+5kgの重量をカバーしながらEN-Bの認証を取得している。ただし、これはあくまで「拡張」された重量範囲であって、通常使用の場合はこれまで通り「standard weight range」を基準として欲しい。
サイズにおいて特筆すべき点が、21と23の間に22が設定されたことだ。21は75〜95kg、23は90〜110kgをカバーするが、装備重量90kg付近のパイロットにとってはサイズ選びが悩ましいことになってしまう。それが22であれば、83〜103kgと、中間あたりで乗ることができる。これはありがたい心遣いではないだろうか?
3つのサイズを乗り比べてみる
今回は23(90〜110kg)サイズに装備重量102kg(ほぼ中間)で、22(83kg〜103kg)サイズに101kg(ほぼ上限)で、さらに22を85kg(ほぼ下限)と上限、中間、下限で試乗、それぞれのフィーリングを確認してみた。グライダーを広げると、リーディングエッジ側の両翼端側に翼中間まで入れられた3本の切り返しがマエストロの特徴だ。アスペクトは展開5.56、投影4.01と、このクラスにおいては一般的な数値。実際に広げてみてもアスペクトを感じることはなく、ごくごく普通のビジュアルと言った印象を受けた。
ラインも少なくAラインは外側1本と内側1本で、それぞれがA1、A2ライザーで分離。Bライザーにはスタビを含めて3本、Cライザーは2本とラインはとても少ない。ライズアップはA1とA2ライザーを持ち、均等なテンションを与え続ければ一定のスピードで頭上まで上がってくる。この時、パイロットを追い越して前に被るようなことはない。2m/sの適度なアゲンストの中で、しっかりと荷重をかけるだけでマエストロは揚力を発生させ、やや斜め前方に向けてパイロットを引き上げようとする。その力を利用して軽く走りこむことで簡単にテイクオフは完了した。
ハンドリングに酔いしれる
空中で改めて頭上を見上げてみる。セル数は60だがハーフリブにより120と細分化、ジグザグ3Dシェイピングと相まって非常に綺麗なリーディングエッジを形成している。見た目からマエストロが秘めるパフォーマンスを想像することはできないが、それはサーマルセンタリングを行った瞬間に実感することができる。
何をおいてもマエストロの持つハンドリングは素晴らしいの一言に尽きる。とても軽いタッチで、旋回を自由にコントロールすることができる。私は個人的に小さいタイトなセンタリングが好きなのだが、そのような旋回にも違和感なく追従してくれる。だからと言って旋回が切れ込んでノーズが下に向くようなことはなく、適度な速度とバンクでサーマル内に留まることができる。また、外翼を軽く当てながらのフラットな旋回でも、しっかりとリフトを掴んで心地よい上昇を与えてくれる。
安心感と安定感がさらなる高みへと誘う
朝霧エリアで主稜線に乗り、まずは真っすぐに飛ばせてみる。非常にピッチ安定が良く、グラグラすることなく滑らかに直線飛行をしてくれる。アスペクトが4.1なのだから当然なのかもしれないが、妙な動きやぐらつくような挙動は全くなく安心して乗っていられる。 しかし一度サーマルの気流をキャッチすると、そちらの方向へ行こうとするのでサーマルサーチにも有効だ。この挙動がとてもわかりやすいので「上げて走る」というフライト本来の楽しさを改めて感じさせてくれる。
天子方面へとトランジット開始。アクセルは軽く踏みこめ、アクセルを踏んでいるときの安定感は抜群だ。アクセル中はCライザーに軽くテンションを与えておけば良い。ハーフアクセルからフルアクセルまで安定感は変わらない印象で、コンペやクロカンにおいても戦闘力を発揮してくれるに違いない。
ピッチングはパイロットがフィギアとして意図的に操作すれば簡単に入れることができるが、フロントを潰すほどの過激な操作をしても、前方向への動きはまるでリミッターがあるかのように抑制される。非常に粘り強いので、ストールに入れるのは難しそうだ。ローリングも軽く短いストロークで簡単に入れることができ、このあたりの味付けが旋回の楽しさの一因なのだろう。
今回は重め、中間、軽めでフライトを実施してみたが、どのウェイトレンジでも感じた特性に大きな差はなかった。軽いとプカプカフワフワしたり、重いと速度が速くなったり浮きが悪くなったりしがちであるが、少なくとも今回の試乗においては大きな差は感じられなかったというのが結論だ。
誰のためのマエストロか?
マエストロは、おそらく3機目以降にチョイスされるようなパフォーマンスを持つグライダーであるが、その秘めた実力をハイエンドBというレーティングだけで語るのは間違いだ。スクールを卒業して自分のフライトスタイルを確立しようとしている「まだまだ上手くなりたいパイ
ロット」や、チャレンジリーグなどのレクリエーションコンペに積極的に参加しているような「アクティブなパイロット」、さらには、エリアでじっくりゆったりとフライトを楽しみたい「ベテランパイロット」であっても、それぞれの目的において、それぞれの乗り方で、まるでパイロットに寄り添うかのように飛んでくれるのがマエストロなのだ。
乗り手を選ばない寛容性と、乗り手に追随し要求にこたえることができる自在さは、まさにハーネス・パペッシュの作りたかったハイエンドBのグライダーなのだろう。そして、そのグライダーを世に送り出したパペッシュこそが真の「マエストロ(巨匠)」なのかもしれない。
(REPORT:Koichi Fujino)
SPEC INFORMATION
サイズ | XS(17) | S(19) | M(21) | ML(22) | L(23) | XL(25) |
セル数 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 |
翼面積(投影)㎡ | 17.31 | 19.21 | 21.21 | 22.22 | 23.21 | 25.27 |
翼面積(展開)㎡ | 20.33 | 22.56 | 24.91 | 26.1 | 27.27 | 29.68 |
スパン(投影)m | 8.33 | 8.78 | 9.22 | 9.44 | 9.65 | 10.07 |
スパン(展開)m | 10.63 | 11.2 | 11.77 | 12.05 | 12.31 | 12.85 |
アスペクト比(投影) | 4.01 | 4.01 | 4.01 | 4.01 | 4.01 | 4.01 |
アスペクト比(展開) | 5.56 | 5.56 | 5.56 | 5.56 | 5.56 | 5.56 |
飛行重量 kg | 50-75 | 65-85 | 75-95 | 83-103 | 90-110 | 105-130 |
機体重量 kg | 4.0 | 4.3 | 4.6 | 4.75 | 4.9 | 5.2 |
安全規格 | (B) | B | B | B | B | (B) |
価格(税別) | ¥560,000 | ¥560,000 | ¥560,000 | ¥560,000 | ¥560,000 | ¥560,000 |
[製造元]PHI/オーストリア
[輸入・販売元](有)エアハートコーポレーション
[URL]https://www.airheart.jp/