ギア・インプレッション

MENTOR2

NOVA

MENTOR2

浮き良し、速度良し、旋回良し!
三拍子揃った名機誕生

フランス・サンチレールのイカロスカップ2010で発表されたメンター2。その滑空性能の良さと安全性で世界中のインターネットフォーラムを震撼させる鮮烈なデビューを果たした。同社のトリトンをしのぐ滑空性能、ENテストパイロットを仰天させた安全特性とは果たしていかなるものなのか。

構造の特徴と3列ラインコンセプト

リーディングエッジにはノバ自慢のポリマーロッドが組み込まれている。このポリマーロッドは形が崩れても元に戻る形状記憶素材なので、グライダーを畳むときにリーディングエッジの保護に気を遣う必要がない。
ライン取りはこのクラスでは初めての取り組みといってよい、A・B・Cの3列コンセプトだ。また、セル数を最小限に抑えた構造なのでライン数は少なく、グライダーを絞って持ち歩く時にラインの束の細さに驚かされた。アッパーラインにはケブラーのコンペティションラインが装着されているが、シンプルな2段のカスケードと少ない本数なのでラインソートはとても簡単だった。

サーマルコンディション

普段2ライナーに乗っている私には、メンター2のブレークプレッシャーは驚くほど軽い。3ラインコンセプトなのでもう少し重いかと想像していたが、全く違っていた。この軽さはトレーリングエッジから深くCの吊り下げポイントあたりまで縫い込まれているハーフリブの効果が現れているのかもしれない。
各地で試乗したパイロットは、全員が口をそろえて「サーマルに吸い込まれていくような感じがする」ということだった。実際、翼が上昇気流に遭遇すると、前方というより斜め上方向に加速していく。この感覚は間違いなくABCラインコンセプトの特徴だ。今までのように翼を回し込み、ノーズを下に向け加速させながらサーマルセンタリングを続ける操作の必要性はまったくない。上昇率が良くなると翼の加速感も向上し、ブレークプレッシャーは重さを増すものの、その重さを保つように操作をすることで一定のバンクを維持できるので、最良の上昇率を示してくれた。

アクセレーションと降下手段

2プーリーの軽い踏み出しのアクセレーターを徐々に踏んでいくとスムーズな加速を実感できる。トップスピードはGPSの対地速度でプラス15km/hと1−2クラスとは思えない加速感だが、それに加え、全く潰れそうにない安定感もある。トップスピードが51km/h、滑空比は6.7。しかし飛行時の感覚ではトップスピードの滑空比が7.0位に感じられるので、トリム速度の滑空比は10.0近くに感じてしまう。メンター2のアクセレーターは、軽い、速い、下がらない、安定、という高速飛行時に欲しい機能を全て兼ね備えたハイクオリティなスピードシステムだ。
ビッグイヤーを行った時のやりやすさ、安定感、そしてアクセレーターを併用したときに求められる降下率は納得のいくものだった。ビッグイヤーの終了はライザーをリリースするだけでオートマチックに回復する。ランディング間近までビッグイヤーでアプローチをかけても失速の恐れが少ないこの特性も忘れてはいけない基本性能の一つだと感じた。
メンター2は、パラグライダーで飛ぶ全ての人が欲しくなるグライダーといえるかもしれない。パラグライダーを楽しむパイロットにとって必要なことがすべて詰まっていると感じるスグレモノだ。

(REPORT: Kaoru Ogisawa)

SPEC INFORMATION

サイズ XXS XS S M L
セル数 5151515151
翼面積(投影)㎡ 18.36 20.33 22.3 24.26 26.21
翼面積(実測)㎡ 21.68 24 26.33 28.65 30.96
翼幅(投影)m 8.46 8.9 9.32 9.72 10.11
翼幅(実測)m 10.86 11.42 11.96 12.48 12.97
アスペクト比(投影) 3.9 3.9 3.9 3.9 3.9
アスペクト比(実測) 5.43 5.43 5.43 5.43 5.43
全高 m 6.27 6.6 6.91 7.21 7.49
ライン全長 m 224 235 247 258 268
弦長(max/min) m 2.49/0.62 2.6/0.65 2.72/0.68 2.84/0.71 2.95/0.74
機体重量 kg 5.2 5.4 5.7 6.0 6.3
飛行重量 kg 60-80 70-90 80-100 90-110 100-130
速度(MIN/MAX/TRIM)km/h
安全規格(DHV/AFNOR) B/C(>80) B B B B
価格(税込) ¥462,000 ¥462,000 ¥462,000 ¥462,000 ¥462,000

[製造元]NOVA/オーストリア
[輸入・販売元](有)アエロタクト
[URL]http://www.aerotact.co.jp/

2011年2月号掲載)