GIN GLIDERS

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後継機ではない新グライダー登場！
フライトに余裕が生まれる安定感

ジングライダーズから満を持して発表されたズームは、多くのパイロットの期待を一身に受けて日本の空に飛び出した。既に同社からはクラス2に分類される機体が複数発売されているが、ズームはどんな位置付けになっているのか？　期待に見合う性能なのか？

新たに与えられたコンセプト

ジングライダーズは以前から、バンディット、ギャングスターというDHVカテゴリーでは同じクラス2に属するグライダーを発表してきた。しかし、今回発表されたズームは、それらと同じカテゴリーでありながら毛色が違うというか、目的とされるグライダー作りのコンセプトそのものが全く違うような印象を受ける。
データだけを見ると、むしろノマドに非常に近いものであることが解る。ブーメラン、ノマドに装備されたリッジフォイルは採用されていないものの、セルの内部構造に新たな特徴を発見した。それがパーシャルダイアゴナルだ。
2インターナルリブ、1ダイアゴナルというジンのスタンダードな構成に加えて、メインのリブ間に横方向にテープが入っている。このテープが加わることで横方向への歪み生じさせないようにし、キャノピー表面のシェイプを美しく保つことを可能にしている。これによりフライトにどのような影響を与えるのか？　それについては後述のフライトの中で述べたいと思う。

フライト

ジングライダーズ全般に言えることだが、グランドハンドリングはどちらかといえば少し重めと感じるかもしれない。ズームは少々強引に力を加えてもインテーク周りの形状が保たれ、素早いインフレーションを可能にしている。インテークから空気が充填されながらライズアップしてくる過程は、加減速のない一定のスピードで上がってくるので、ブレーキングまでのリズムが非常に解りやすくなっている。
いよいよフライトへと突入だ。滑るようにテイクオフしてゆくズームだが、ここでも特にピッチ方向の安定感が素晴らしいものに感じられる。スピードセンサーには表れないが、体感的に滑るようなグライディングという表現を使いたくなる。
アクセルはハイパフォーマンスなグライダーにはなくてはならないものだが、ズームのライザーはシンプルな構造でストロークも長い分、加速時のショックやスピードの変化からくるピッチの不安定感は感じられない。通常の使用域（80％）での加速感や沈下率、安定感は本当に素晴らしく、ブーメランの成功がここにもフィードバックされているようだ。
ズームでフライトするとサーマル間の移動にアクセルを今以上に積極的に使ってみる気になるのではないだろうか。是非とも試して欲しいものだ。また、フルアクセル状態でもリーディングエッジに形状変化が見られない。先述のリッジフォイルがなくなった理由が、これでわかった。
そしてサーマル内での浮きの良い旋回には驚かされた。サーマルに入る際のノーズアップも少なく、余計な操作やタイムラグを意識することなくターンを始動できる感じがするし、ターン中の引っ張り上げられる上昇感は、今までになかったフィーリングだ。
乱れた空域においても、両方のブレークコードを少し引き込むだけでグライダーの安定感が一気に増し、また翼の挙動が解りやすくなる感じだ。上空の乱れた空域や、地表付近の乱れた空域を安全に抜けるには、非常に有効なテクニックになることだろう。

余裕が生む新たなフライトの楽しさ

同社の新たな翼のひとつとなるズームはとにかく癖がないため、フライトに集中出来る。そしてフライトに集中出来れば、今よりもっと楽しいパラグライダーの世界が始まるのではないだろうか。
そして、世界中でも、ズームはブレークしていると聞く。癖のない、現代のハイパフォーマンスなグライダーがクラス2という安全性と共に手に入ることは、世界の多くのパイロットによって待ち望まれていたということだろう。

（REPORT：Masato SOGABE）