ギア・インプレッション

VOLT3

AIRDESIGN

VOLT3

REBORN!

ハンドリングと上昇性能、快適な飛行特性に定評のあったVOLT2が
その良いところを踏襲しつつ
クロスカントリーに最適な軽量ハイスピードマシン VOLT3に生まれ変わった!

第一印象は、小さい!軽い!

 少なめのセル数で軽量コンパクトなグライダーが多いエアデザインだが、ヴォルト3でもその流れを引き継いでいる。ヴォルト2と比較すると展開アスペクトレシオは6.2から6.5と大きくなりパフォーマンスが向上しているが、セル数は59のままを維持し軽量化に貢献している。  ヴォルト2では、軽量モデルと標準モデルの2モデルがラインナップされていたが、ヴォルト3では1モデルのみとなり機体重量はSサイズで3.9kgと軽量モデル並だ。パッキングサイズが50cm×40cm×10cm程度とコンパクトに収納できることも非常に魅力的だ。

随所に見られるアイデアと軽量で高い耐久性

 地面と擦れることの多いキャノピー上面はドクト20DMF、下面にはスカイテックス27を使用し耐久性と軽量化の両立が図られている。外見の大きな特徴は、翼端のウィングレット形状とボルテックスホールだ。これは誘導抵抗を減らし、滑空性能と方向安定性を向上させる効果を狙っている。翼端付近のリーディングエッジは、リブとリブの間もバテンで形状を整え綺麗な翼端形状を形成し、徹底的に誘導抵抗を減らす工夫が施されている。
 キャノピー内部の構造を見てみると、3セルを1組としてVリブで繋いだシンプルな構造が翼端まで続き、軽量化を意識した作りとなっている。バテンはリーディングエッジ側に50cm程の長さで入っているのみでパッキングも簡単に行える。ラインはアッパーからボトムまで被覆無しのエデルリッド8000-Uを採用、A2本、B2本+スタビ、C2本の片側計7本と少ないラインで抵抗を極限まで押さえている。ライザーもシンプルな構成で、スプリットAはなくA、B、Cの3本のみ。

抜群のクライムレートと優れた高速グライド

 装備重量82kg、Sサイズ70kg〜85kgの上限近で試乗した。テイクオフはこのクラスとしては非常に簡単だ。アスペクトレシオが高めでスプリットAライザーもないが、ライズアップで翼端から上がってくる傾向は全くない。キャノピーを綺麗にセットアップできない場面や、クロスウィンド、弱い風でも楽にテイクオフできる。これは整備されたテイクオフがあるとは限らない場面でとても心強い。
 飛び始めてみるとキャノピーは比較的柔らかめの印象を受ける。大気の状態がライザーやブレークコードを介して分かりやすく伝わってくるのでリフトを探しやすく、潰れの前兆もよく分かる乗りやすい自然な味付けになっている。サーマル内でのクライムレートは非常に良好。特にハイバンクで旋回半径を小さくした時の沈下の少なさが目立った。数人でガーグルを組んでいても、一番初めにサーマルを上げきることができる。これは競技やクロカンでも大きなアドバンテージとなるだろう。
 ライザーとブレークプーリーを繋ぐウェビングは長めに設定されていて、ブレークコードを引く方向によってトレーリングエッジの翼端側を多く引いたり、中央側を多く引いたりとコントロールできる幅が広い。フラットで効率の良いターンからクイックなハイバンクターンまで、自在にコントロールできる楽しさがある。ブレークストロークは長くも短くもなく標準的、サーマリング中はコンタクトポイントから20cm程度の範囲でコントロールできるだろう。ブレークプレッシャーも標準的で丁度よく、引いた量に対してリニアに重くなる特性だ。

C/Bコントロールシステムで高効率の高速グライド

 追い風と向かい風でトリムスピードを測ってみると、平均して37km/h前後。ヴォルト2ではスピードが遅めという印象があったが、ヴォルト3では少し速めの設定になっているようだ。アクセルを踏み込むとAライザーに対してBライザーは5/8の割合で引き込まれる構造で、アクセル使用時のピッチ安定性と耐フロントコラップス性に優れていることが想像できる。実際に不安なくフルアクセルまで踏み込むことができ、パフォーマンスも良好だ。
 アクセルを踏みながら少し荒れた中をグライドする時は、C/Bコントロールシステムが威力を発揮する。これはCライザーの黄緑色の部分を握りカラビナ方向に引き下げるようにコントロールすることで、Bライザーも連動して1/2の割合で引き込まれ翼断面のキャンバー変化を抑えたままアッタクアングルをコントロールできるので効率の良い高速グライドが行える。手前側(身体側)に引っ張ると、Cライザーだけが引かれる格好となりやすいので注意しよう。
 翼端折りは下降手段として十分に機能する。外側のAラインを引き込むことによって行なうが、Aラインは2本しかないので比較的大きく翼端が折れる。一度に大きく引き込むと折れた翼端が暴れる場合があるので、少しずつ引き込んで行くのが良いだろ。アクセルも併用するが、フルアクセルまで踏み込むと同様に翼端が暴れる傾向が出たのでハーフアクセルがお勧めだ。コツを掴めば問題なく安定した翼端折りを行なうことができる。
 翼端を折る量やアクセルの踏み込み量によって、-3m/s〜-5m/s程の範囲で沈下速度をコントロールできた。スパイラルも問題なく下降手段として使え、下降速度のコントロールも容易だ。導入も簡単で切り込んでいくような不安定な挙動もない。離脱では若干ピッチアップしやすい傾向を感じたので、スムーズな離脱を心がけると良いだろう。

多くの人にお勧めできるグライダー

 軽量コンパクトでテイクオフしやすく、アクセルを踏んだ時のパフォーマンスも良いヴォルト3は、クロスカントリーフライトやハイク&フライに最適だ。癖のない乗り味で、キャノピーからの情報が分かりやすくコントロール幅も広い。アクティブコントロールをマスターしたパイロットにとって、フライトが楽しくなるグライダーだ。遠征が多く装備をコンパクトにしたい、アスペクト比6前後のグライダーからのステップアップ、競技で上位を目指したいなど多くの人におすすめできるグライダーに仕上がっている。

(REPORT:Hiroaki KOBAYASHI)

SPEC INFORMATION

サイズ XS S SM M L
セル数 5959595959
翼面積(投影)㎡ 16.8818.4119.8321.1522.97
翼面積(展開)㎡ 19.9621.7723.4525.0127.16
スパン(投影)m 9.139.539.9910.2210.65
スパン(展開)m 11.3911.9012.3512.7513.29
アスペクト比(投影)
アスペクト比(展開) 6.56.56.56.56.5
飛行重量 kg 60-7570-8580-9585-105100-125
機体重量 kg 3.533.854.154.434.81
安全規格 CCCCC
価格(税別) ¥560,000¥560,000¥560,000¥560,000¥560,000

[製造元]AIRDESIGN/オーストリア
[輸入・販売元]エア・カッシー
[URL]http://www.airkassy.com/

2019年4月号掲載)