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ホンダ/エスロクロクマル
HONDA S660
甦ったホンダ軽オープン
2013年の東京モーターショーでホンダのブースに展示された「Honda S660CONCEPT」の周りには、たくさんの人だかりができていた。量産車初のミッドシップレイアウトを採用し、独特の走る楽しさを提供してくれた軽オープン「ビート」は、生まれた時代が悪かった。バブルが弾け、日本経済はどん底にまっしぐら。その中で自動車マーケットの中心にいたスペシャルティカーは低迷、街中がミニバンで溢れていく。軽自動車の規格の改正も重なり、1996年1月に惜しまれつつ生産を終了した。
最近のホンダは2011年12月に「N」シリーズ第1弾モデル「エヌボックス」を発売して以来、「エヌボックス プラス」「エヌワン」「エヌ ワゴン」「エヌボックス スラッシュ」と積極的に軽自動車をリリースし、わずか38カ月で累計販売台数100万台(2015年2月末)を超えた。今やホンダはダイハツ、スズキに次ぐ第三の軽自動車メーカーなのだ。
往年のホンダファンの中には、この状況に寂しさを感じている方も多いだろう。便利で売れる車ばかりで、もっとホンダらしい車・楽しい車がないじゃないか…だから「Honda S660 CONCEPT」の登場に多くの人々が沸き立った。

Heart Beat Sport!
ホンダ社内での研究所50周年を記念した商品企画コンペが開催で、入社4年目の若い社員の案が1位に選ばれた。「どんどんハイスペックに、速く、しかし高価になっていったスポーツカーは、自分では乗りこなせない…だから、もっと等身大のスポーツ
カーが欲しい!そう思っているのは、私だけではない。“クルマ離れ” が取り沙汰される私たち世代にも、そして今はそれを忘れてしまった “ 大人”の中にもたくさんいる、と考えたのです」(S660プレスインフォメーションより)と椋本陵氏はその熱い想いをコンセプトに込めた。かくしてホンダ史上最年少の開発責任者に抜擢され、生み出されたのがS660なのだ。
見て楽しい、乗って楽しい、そしてワクワク、心がたかぶる本格スポーツカーを追求し、「Heart Beat Sport」をキーワードに「走る喜び」をこれでもかと盛り込んだ。もちろんミッドシップエンジン・リアドライブ(MR)レイアウト、旋回性能、低重心、前後重量配分(45:55)、軽量化と徹底的にこだわり、スポーツカーが持つ楽しさや醍醐味を形にした。もちろんオープン…と言いたいところだが、ルーフの真上部分だけしか開かないので厳密には後ろ部分が残るタルガ
トップで、ボディの軽量化や使いやすさ、年々厳しくなる衝突安全性能を考えれば妥当な判断と言える。
どのグレードを選んでも、
気長に待つべし!
グレードはハイグレードモデルαとベーシックβ、ミッションは6MT とCVT [ パドルシフト] をチョイスできる。ゴーカートに乗っているようなドライビングポジション、新設計のターボチャージャー、吸排気音、ア クセルオフ時のブローオフバルブ音などのサウンドチューニングが走る楽しさを五感に訴える。オプションだが車体の動きに応じたコントロールにブレーキ制御を活用し、コーナリング時に狙ったラインを少ないステアリング操作でトレースしてくれる電子制御システム「アジャイルハンドリングアシスト」も採用。しかし、S660は熟練の技術者が専用工程で製造され、1日40台、月間約800台と生産台数が限られている。ちなみに、今オーダーしても納車は2016年の7月以降。発売を記念した特別限定車「S660CONCEPT EDITION」(限定660台)は既に販売を終了している。生産ラインを拡大すると、投資も必要な上にスペシャルティカーの先行きが分からない。だからより多くを売ることを選ばず、決まった量をしっかり確実に作って販売する。こんな売り方もありだ。
DATA
●車体 | |||
---|---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 3395×1475×1180 | ホイールベース(mm) | 2285 |
車両重量(kg) | 850 | 乗車定員(人) | 2 |
●エンジン | |||
型式 | 水冷直列3気筒横置 | 排気量(cc) | 658 |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 47[64]/6000 | 最大トルク(N-.m[kg-m]/rpm) | 104[10.6]/2600 |
JC08モード燃費消費率(km/l) | 24.2 | 駆動方式 | MR |
■車両本体価格帯(税込):¥2,180,000(¥1,980,000~2,380,000)
■お客様相談室 0120-112010
■URL: http://www.honda.co.jp/S660/